教授
宮原 曉 ミヤバラ ギョウ

フィリピン語専攻

受験生へのメッセージ

私たちが学ぶ、学びの場は、人びとの自由を抑圧する存在との緊張関係に注意を払って、周囲で起きる諸現象を多角的に理解する場でもあります。そこでは、何らかの意味でメジャーになることを目標とするのではなく、自らに内在するマイノリティ性を引き受け、その視点から他者のマイノリティ性と向き合い、対話を重ねる努力が重要です。学生の皆さんとの出会いの中で、こうした探求の「種」を見つけ、共に学びを深めていけることを願っています。

授業の紹介

フィリピン語学やゼミなどの基幹科目に加え、「司法通訳翻訳論」「現代ジャーナリズム論」、人文学と自然科学の協働をめざす「総合知によるコミュニティー・エクステンション・リサーチ」などの実践的な科目では、下記の要素を強く意識しています。
【言語】非規範的な側面に注目
国語や標準語といった規範的な言語だけでなく、それらと緊張関係にある非規範的な表現、逸脱した言い方、言い淀み、間違い、そして沈黙といった側面にも深く配慮します。
【文化】人々の日常的な思考と実践を重視
洗練された文化や真正な伝統と見なされるものとは一線を画し、一見取るに足らないように見える人々の日常的な思考や実践に着目します。
【地域】国境を越えた像の描出
視覚的に知覚できる境界線に疑問を投げかけ、断片的な事柄の結びつきから、今日の国家の枠組みを超えた広がりを持つ像を描き出すことを試みます。
【学術】アジアの思想に基づく新たな科学的説明への挑戦
既存の学術的な伝統を尊重しつつ、その背後にある歴史観や世界観に踏み込みます。西洋的な科学的手法でアジアの文化を説明するだけに留まらず、アジアの思想を基盤として、逆に西洋の科学の説明を試みるという挑戦的な試みを行います。
【発想】ブレークスルーを促す荒削りなアイデアの重視
完成度は低くとも、ブレークスルーを生み出す可能性を秘めた、荒削りな発想を積極的に推奨し、育みます。

研究活動の紹介

近代の視覚中心的な文化・言語概念を再検討し、東アジア・東南アジア社会への新たなアプローチとして、「類像性(アイコニシティ)」——「異なりつつも、類似している」関係性——を軸に研究しています。具体的には、越境的な移動を伴う人々の思考様式とそれを媒介するメディアの特質を明らかにするため、以下の民族誌的調査を展開しています。
リテラシーとオラリティ: 僑批(送金兼手紙)による非識字者間のコミュニケーションの分析。
声の想像力: 唸歌、詩吟、浪曲、江州音頭、御詠歌、陀羅尼などの声の実践から、人びとが想像する世界を探る。
シミュラークルと真正性: 「中国写し」陶磁器や日本の漢詩人による漢詩など、オリジナルとコピーが共存し評価される現象から、現代の真正性や消費行動を考察。
これらの事例を通じ、地域・時代を超えて伝わる知識の軌跡、メディアの物質性・表現性が社会実践に与える影響を考察します。

研究分野
社会人類学
研究キーワード
コミュニケーション オラリティとリテラシー 類像性 
代表的著作、論文等
"Scripted Resonances: Han Écriture, Minor Literature and Vernacular Negotiation in Sinophone Asia," Langkit : Journal of Social Sciences and Humanities, 14:1-26. (2025).
「鏡界としてのコンタクトゾーン」『社会人類学年報』50:49-63. (2024).
「ソウルフード以前―フィリピン諸島と福建の間のディアスポリック・チャイニーズの日常的な食 」『華僑華人研究』13: 118-138. (2021).
所属学会、その他の
研究活動等
日本華僑華人学会 文化人類学会 アジア太平洋研究会