ウルドゥー語専攻

ムスリム聖者廟のひととき(パキスタン・カスール)

宮殿の広間(インド・ハイダラーバード)

 ウルドゥー語は、パキスタンの国語であり、インドの主要言語の一つです。アラビア文字を用いて筆記されますが、言語系統的にはインド・ヨーロッパ語族に属し、サンスクリット語から派生した新期インド・アーリア諸語のひとつです。11世紀頃に西アジア・中央アジアからイスラーム教徒がインド亜大陸に移住し、さらに12世紀以降イスラーム教徒の政権が盛衰し、この間にアラビア語・ペルシア語と北インドの言語が混ざり合って徐々に成立しました。ムガル王朝の絢爛たる文化のもとで、その美意識を反映してウルドゥー語は文芸語・雅語として確立され、数々の“うた”(韻文詩)が生み出されました。現在でも、花鳥風月を愛で、それを美しい言語表現で詠う伝統は続いています。さらに18世紀からイギリスの植民地化が本格化するとウルドゥー語は英文学の影響を受けながら近代語として整備され、思想家や著述家によって深い思考を凝らした優れた散文作品が数多く著わされて、南アジアの近代化を裏打ちするようになります。
 ウルドゥー語の話者人口はインド・パキスタンだけで数億人を数えます。またウルドゥー語を用いる南アジア系の人々は、南アジア亜大陸だけでなく欧米・中東湾岸諸国など世界各地に数多く暮らしています。ウルドゥー語はパキスタンでは国語として用いられています。パキスタンは中東、中央アジアとの接点に位置し、ウルドゥー語は地政学的観点からも非常に重要な言語であると言えます。また、近年成長著しく、世界が注目する国インドにおいてもウルドゥー語は重要な文化的・社会的役割を果たしています。
 なおウルドゥー語とヒンディー語は、姉妹関係にあります。ただしウルドゥー語にはペルシア語・アラビア語からの借用語彙が多く、ヒンディー語にはサンスクリット語からの借用語彙が多いという著しい違いがあり、文字も全く異なります。しかし南アジアの人々の娯楽の一つである映画や音楽は、この両言語の話者双方が理解できる語彙が用いられていますから、ウルドゥー語を理解することで、インド映画やポップスを楽しんだり、インドやパキスタンのみならず、世界中の南アジア系の人々と会話を楽しめます。
 とはいえ、高度な内容の会話や文献となると、ウルドゥー語とヒンディー語では大きな隔たりがあることも事実です。ウルドゥー語はアラビア・ペルシア語彙を多く含むので、ウルドゥー語を習得すると、アラビア語やペルシア語の新聞・書籍等を見て、内容に関するある程度の推測ができるようになります。日本人が中国語の新聞を見て記事の内容を漢字で推察できるのと似ています。つまりウルドゥー語を学べば、周辺地域の様々な言語に関する知識をも身につけることができるのです。このことは同時に、周辺言語の語彙や知識を学ぶ姿勢が求められるということを意味します。
 本専攻では、ウルドゥー語を通してウルドゥー語圏の文化・文学・社会などについて幅広く、専門的な知識が身につけられるような授業プログラムが組まれており、南アジア地域を正しく理解すること、そして南アジア地域の魅力を味わえるようになることを目的として教育を行っています。

専攻語紹介

教育・カリキュラム

 ウルドゥー語はアラビア文字で書かれます。1年次ではまずこの文字の読み書きから学び始めます。文字の習得が終わると、文法の学習と並行して簡単な会話や文章読解の練習を行い、小学校低学年レヴェルの文章の読み書きができるようになることを目指します。2年次では、より高度な文章の読解能力、作文能力の養成を行い、ウルドゥー語を用いる人々と意思疎通ができるような、さらには簡単な議論もできるような語学力の養成を行います。学生の中には、授業以外にも、外国人教師と昼食をともにしながら会話力をつける人もいます。2年次では、ウルドゥー語圏で非常に重視されている詩や美文学も学びます。3年次以上では、関心に応じて授業を選択し、ウルドゥー語の文献を用いて高度で専門的な知識の獲得を行います。各自の研究テーマを決めてもらい、指導教員の専門的な指導を受けながら、3・4年の二年をかけて研究に従事し、それを卒業論文としてまとめます。
 ウルドゥー語習得の一番の醍醐味は、南アジアの文化に直に触れることです。南アジア研究において英語の資料は不可欠ですが、英語の資料には現れない生の声を知ることはウルドゥー語を学習してこそ可能です。現地語を知っているのと知らないのとでは、南アジアの社会・文化を理解する度合いや深みが全く違ってきます。人名・地名、料理・衣服など、あらゆる語彙と言語表現に、独特の色鮮やかな文化が生き生きと根づいていることがわかるでしょう。

到達度目標はこちら

文学、思想の表現手段として、また、多言語社会をつなぐ共通語の一つとして南アジアで重要な役割を果たしてきたウルドゥー語を学習したい人、ウルドゥー語を通じて南アジアの言語、文学、文化、社会を研究したい人

理解すること

専攻語科目(1年実習) 専攻語科目(2年実習) 専攻語科目(演習)
聞くこと
  • はっきり、そしてゆっくりと話されれば、挨拶の言葉や周辺の具体的事物に関する、基本的な単語や表現が用いられたウルドゥー語を聞きとることができ、内容を日本語で説明することができる。
  • 自然な速さに近い速度で話されても、高級語彙や難しい表現が用いられていなければ、日常生活に関連した簡単な話を理解することができ、内容を日本語で説明することができる。
  • 文学、社会、歴史、文化等に関する内容でも、高級語彙や難しい表現があまり用いられていなければ大意を理解することができ、要点を日本語で説明することができる。
読むこと
  • 基本的な単語や表現が用いられたウルドゥー語の簡単な文章を理解することができ、内容を日本語で説明することができる。
  • 基本的な単語や表現が用いられた簡単な文章を理解することができ、内容を日本語で説明することができる。
  • 十分な準備時間があれば、高級語彙が含まれ、やや複雑な構文が用いられた文章でも大意を把握することができ、日本語で説明することができる。
  • 文学、社会、歴史、文化等に関する高度な内容でも、大意を把握することができ、要点を日本語で説明することができる。

表出

専攻語科目(1年実習) 専攻語科目(2年実習) 専攻語科目(演習)
話すこと やりとり会話への参加
  • はっきり、そしてゆっくりと話されれば、自分や家族、周辺の具体的事物に関して、ごく基本的な単語、表現を用いて対応することができる。
  • 自然な速さに近い速度で話されても、高級語彙や難しい表現が用いられていなければ、買い物やレストランでの注文など日常生活に関連した簡単な内容の会話に参加することができる。
  • 文学、社会、歴史、文化等に関する内容でも、高級語彙や難しい表現があまり用いられていなければ、会話に参加することができる。
表現一人で行う
報告など
  • 自分や家族、周辺の具体的事物に関して簡単な単語や表現を使って表現することができる。
  • 自己紹介や家族紹介など簡単な内容であれば、基本的な単語や表現を用いて短い話をすることができる。
  • 文学、社会、歴史、文化等に関する内容でも、高級語彙をある程度まで用いて短い口頭発表をすることができる。
書くこと
  • 自分や家族、周辺の具体的事物に関して簡単な単語や表現を用いて簡単な文章を書くことができる。
  • 自己紹介や家族紹介など簡単な内容であれば、基本的な単語や表現を用いて短い文章を書くことができる。
  • 文学、社会、歴史、文化等に関する内容でも、高級語彙をある程度まで用いて短い文章を書くことができる。

その他

1・2年次
目標言語圏又は日本で実施されている公式語学検定試験についての概要
3・4年次
言語の応用力及び地域文化の専門的知識の習得
専攻語科目(演習)
1・2年次
3・4年次
[公的な語学試験は行われていない]
  • ウルドゥー語圏の文学、社会、歴史、文化等に関する基礎知識が必要とされる内容でも対応することができ、内容を日本語で説明することができる。
  • 自分の専門分野に関することであれば、専門的な内容でもその大意を把握することができ、要点を日本語で説明することができる。

到達度評価制度とは

外国語学部では、専攻語教育に関して、2007年度より「到達度評価制度」を取り入れています。
25専攻語毎に1年次、2年次、3・4年次に分けて提示しています。
その特徴は、以下のとおりです。

  • ・言語学習の「聞き、話し、読み、書く」の4技能のうち、「話す」は「やりとり(対話)」と「表現(独話、発表等)」に分けて考え、計5項目として記述してあります。
  • ・各専攻語の提供する専攻語教育において、何が目指されているのかを示してあります。
  • ・目標の記載は、否定形を使わず「0できる」という能力表現(Can-do Statements)で記述してあります。
  • ・ここに記載されているのは、基本的に本学の専攻語プログラムをきちんと履修すれば長期留学をしなくても
    6割以上の受講生が到達できる目標と考えられています。

この到達度目標の枠組みは、欧州評議会が2001年に発表したCEFR(Common European Framework of Reference for Languages ヨーロッパ言語共通参照枠)を参照して2007年に作成され、2013年に本学外国語学部がめざす教育目標、枠組みに沿った形で全面改定を行い、内容をさらに充実させたものです。
自分の専攻語の目標を見定めて、自分の言語能力を技能別に把握しましょう。卒業時点での目標はもちろん、生涯にわたる自分の専攻語の到達目標を考えて、各段階で自分自身の納得する到達目標を立てましょう。そのような生涯学習の中の位置づけに基づき、学習目標や方法を主体的に考えて「自律的学習者autonomous learner」になりましょう。そのために上の表を活用してください。

学生生活

学校帰りの子供たち(インド・デリー)

ウルドゥー文学研究の拠点、パンジャーブ大学(パキスタン)

 南アジア料理の食事会やウルドゥー語の詩会を開催したり、国内外の研究者や外交関係者など学外の専門家の講演会を行ったりと、人的交流が活発に行われている点がウルドゥー語専攻の特徴で、学生の皆さんは楽しく、そして幅広く勉強することができます。また、在学中に南アジアを旅行して実地に語学を磨く人もいます。
 ただ、受講していただく授業のほとんどはウルドゥー語の語学学習や南アジア地域についての専門的なトピックを扱うものになり、また3・4年次に取り組んでいただく卒業論文研究でもウルドゥー語資料を使用することになりますから、南アジア地域の言語文化について興味を持ち、自発的に学習していくことが求められます。よく学び、よく遊べ、ということであります。

教員紹介

卒業後の進路

 本専攻の学生は、商社やメーカーなどの一般企業、報道機関などに就職しています。公務員や教員になる人もいます。南アジアの大使館や総領事館で外交官としてウルドゥー語を駆使して活躍している人もいます。

 また、近年、日本の社会状況の変化に伴って、日本国内に暮らす、南アジアにルーツを持つ人々の人口が急激に増加しています。司法・教育等の現場で、ウルドゥー語をはじめとする南アジア系諸言語のニーズは非常に高まっており、今後、国内でもウルドゥー語の知識が実際的に役立つ局面も増えてくると思われます。

 ただ、今のところは必ずしもウルドゥー語が職業に直接関係するわけではありません。しかし、10億の人々が理解する言語とそれを育んだ文化を理解することは、きっと卒業生の大切な財産となっていることでしょう。

専攻のホームページ