このページでは、大阪外国語大学外国語学部地域文化学科南アジア地域文化専攻(ウルドゥー語)の学生が、2005年10月8日に発生したパキスタン北部地震に関する最新情報を、現地報道要約などを中心に、提供しています。内容は随時更新しています。

12/01 11月のニュースを別ページにまとめました。また、12月からはカシュミール問題やインド・パキスタン関係の重要なニュースを掲載していきます。こちらへ。
11/09 10月中の報道をもとに、地震に関する重要な情報をとりまとめました。こちらへ。
11/03 10月のニュースを別ページにまとめました。
10/21 大阪市住之江区内で開催された、パキスタン地震支援フォーラムに参加した報告を追加しました。みなさまからの募金を在京パキスタン大使に託しました。ご協力ありがとうございました。
10/20 ウルドゥー語会話集および基本情報を更新しました。基本情報には、パキスタン人がよく見せる仕草や、間投詞などを追加しました。
10/19 ウルドゥー語専攻の学生が、被災地への支援を行うNGOに協力し、パキスタンの支援団体との交渉を行いました。
10/18 ウルドゥー語専攻の学生有志が大阪外国語大学内で地震への募金活動を始めました。募金活動は昼休みを利用して3日間続け、金曜日に在京パキスタン大使館員に手渡す予定です。
10/17 基本情報・用語集のページにカシュミール地方の詳細図、主要な被災地域の市街図を追加
10/13 デザインをリニューアル
10/12 救援者のためのウルドゥー語会話集を追加
10/12 報道に登場する地名説明を追加
10/11 特設ページを開設

最新ニュース
◇現地報道(ウルドゥー語紙、英字紙など)を日本語訳し、補足解説を付け加えています。また、現地の情報源を通じた独自情報もあります。

基本情報・用語集
◇報道に登場する地名など日本ではわかりにくいと思われる情報をまとめてこちらに掲載しています。

救援者のためのウルドゥー語会話集
◇パキスタンの国語・ウルドゥー語の救援者向け会話集。日本語との対照表になっています。

地震関連活動報告
◇大阪外国語大学構内での募金活動に関する報告

関連リンク
◇パキスタン地震関連・ウルドゥー語関連のリンク集です。

ウルドゥー語専攻トップページ
◇大阪外国語大学地域文化学科南アジア専攻(ウルドゥー語)のページ(表紙)はこちらから。
主たる情報源:ジャング、ナワーエ・ワクト(ともにパキスタンのウルドゥー語全国紙(日刊))、The News International、DAWN(ともに英語全国紙(日刊))、BBC Urdu.com (http://www.bbc.co.uk/urdu/)
時間は、パキスタン標準時。日本との時差は4時間(日本の正午がパキスタンでは午前8時)
日付け別ジャンプ・ 11/3011/2911/2811/2711/2611/2511/2411/2311/2211/2111/2011/1911/1811/1711/1611/1511/1411/1311/1211/1111/1011/0911/0811/0711/0611/0511/0411/0311/0211/01独自取材

南アジア関連最新情報は、こちらへ。
10月31日までのニュースは、こちらへ。

30日付
○アーザード・ジャンムー・カシュミール政府の被害報告書
(イスラーマーバード) アーザード・ジャンムー・カシュミール政府が公表した地震による被害統計によると、同域内での被害詳細は以下のとおり。
・死者総数: 43399人 負傷者総数: 31069人
・被災した村: 1050(域内の村の総数は1313)
・倒壊した家(焼きレンガ): 59908
・半壊した家(焼きレンガ): 20158
・倒壊した家(日干しレンガ): 115075
・半壊した家(日干しレンガ): 49527
・倒壊した学校: 1566
・半壊した学校: 644
・倒壊した病院: 168
・半壊した病院: 70
・倒壊した公的建造物: 341
・半壊した公的建造物: 238
・そのほか倒壊した建物: 6002
・そのほか半壊した建物: 1846 (30日付DAWN紙電子版)
(解説)本統計には北西辺境州など他の地域の被害は含まれていない。また、パキスタンでは、一般に日干しレンガよりも焼きレンガで建てられた建造物の方が強度が高いと考えられている。


○NATOがパキスタンに駐留期間を確認
地震発生後、救援活動のため被災地に駐留していたNATO(北大西洋条約機構)が、パキスタン政府に対し、駐留期限を確認している。年内の撤退に向けた準備が可能なのか、それとも当面駐留を延長するのか、パキスタン政府の意向を確認している。撤退する場合でも4週間程度の時間が必要であり、また撤退による救援活動の空白を作りたくないとの以降からパキスタン政府に確認したもの。国連を始め各機関が指摘しているように、冬の到来とともに二次災害の発生が懸念されており、継続的な支援体制の構築が求められている。(30日付The News International紙電子版)

29日付
○冬の到来により新たな被害が出始めた:国連
(ムザッファラーバード) 被災地では本格的な冬が到来しており、地震を生き延びた被災者の中に新たな被害が出始めている。350万人といわれる被災者の中には、激しい雨や雪のため体調を崩すものが増え始め、低体温症や呼吸障害で100人以上が治療を受けている。パキスタン国軍やNGOなどが懸命の復旧作業を継続しているが、悪天候により、なかなか進展しない状況が続いている。(29日付The Daily Times紙電子版)

○タッターパーニー・メーンダル間で住民の往来
(タッターパーニー) タッターパーニー・メーンダル間で、住民の往来のため実効支配線が開放され、パキスタン側から10人の住民がインド側の親類との面会のため、横断した。しかしインド側からパキスタン側へは誰も来なかった。パキスタン側からは219人のリストがインド側に提示されていたものの、許可が得られたのは今回の10人のみだった。この地区は12月12日に再度開放される。(29日付Daily Jang紙電子版)
(解説)実効支配線開放は、主として救援物資の移動に用いられている。インド・パキスタン間の関係改善(信頼醸成)は表面的に進んでいるが、肝心の部分では双方の考えが大きく変わっていないことが、住民往来の状況に現れていると言える。インドは、ヴァージパイー首相(当時)による関係改善容認発言以降、一貫して「越境テロ」対策をパキスタンに要請しているが、実際には今も「越境」が続いていることに不満を持っており、インドが許可した人数にその不信感が表れていると見られる。


28日付
○北西辺境州政府がテント村を2006年3月で閉鎖と発表
(ペシャーワル) 北西辺境州政府が、現在同州内に設置しているテント村を、2006年3月30日をもって閉鎖すると発表した。同時に、それまでに被災者に対しては居住地を確保することも言明した。ハヴェーリヤーン近郊のテント村を視察した同州地方自治担当相が被災者との対話の中で発言したもので、被災者に対する復興計画も進みつつあることを強調した。(28日付BBC Urdu.com)

○悪天候で、救援活動が難航
(ムザッファラーバード) 被災地周辺では、雨や雪のため最低気温が0度を下回り、また、救援物資を運ぶヘリコプターなどの運航ができなくなり、一時的に救援活動が停止した。そのため、復旧済みの陸路による輸送に切り替えて物資運搬を行っている。
 以前から、冬の本格的な到来により、二次被害が出るとの指摘が、国連など国際機関からなされており、パキスタン政府などによる対策が待たれている。(28日付The News International紙電子版)
(解説)カシュミール地方を初めとするパキスタン北部山岳地帯では、定期航空路もいわゆる有視界飛行で運行されており、頻繁に欠航、遅延が生じる。そのため、従来から雪で道路が閉鎖される冬季には、物資輸送が困難だった。


27日付
○厳しい寒さのため、被災者が低地へ移動
(イスラーマーバード) 被災地では厳しい冬の到来とともに、これまでの居住地を離れ、低地への移動を始めている。国連人道支援調整事務所(UNOCHA)によると、カーガーン渓谷では毎日1000人程度が移動、アラーイー渓谷からも毎日500人程度が移動しているという。
 一方、被災者は、十分な救援物資が入手できることがはっきりすれば、可能な限りもとの居住地に残りたいとの願望を持っている。パキスタン軍当局によると、北西辺境州内のみで、現在もなお30万人程度が救援物資も入手できないような状態にあるといい、カラーコルム・ハイウェーも、ベシャーム以北はNGOや物資輸送のトラックのみに通行許可が与えられている。


26日付
○英連邦諸国会議にアズィーズ首相が出席
英連邦諸国首脳会議が開催され、出席しているアズィーズ首相が、10月8日に発生した地震の復興支援に触れ、「パキスタンにとっては大きな試練の時である」との認識を表明した。また、11月19日の復興支援国会合で国際社会から62億ドルの支援表明がなされたことについては、パキスタンへの信頼の表れであると、あらためて謝意を表明した。(26日付BBC Urdu.com)
(解説)パキスタンでは1999年10月に、ムシャッラフ陸軍参謀長による無血クーデターが起き、軍事政権が樹立したと判断した英連邦が、パキスタンの資格停止を決定した。その後、2004年9月に復帰が承認された。


○ティートワール・チャルヤーナ間の実効支配線開放
(ムザッファラーバード)ティートワール・チャルヤーナ間が、住民の往来のため開放された。住民往来のための開放は3カ所目となった。(The News International紙電子版26日15時40分更新)

25日付
○アンジェリーナ・ジョリーUNHCR親善大使らが被災地を訪問
(バーラーコート) ハリウッドで活躍するアンジェリーナ・ジョリーUNHCR親善大使と俳優のブラッド・ピットが、10月8日の地震で大きな被害を受けたバーラーコートを訪問した。訪問時には被災者に対し食糧や毛布などの支援物資を直接手渡し、被災者を励ました。(25日付The News International紙電子版)

○現在もなお10万人程度が支援を待っている状態
(シャーングラ渓谷) 被災地では既に雪が降り始め、シャーングラ渓谷などで支援を待つ10万人程度が、雪のため支援物資が届かないまま本格的な冬を迎えなければならなくなっている。NGOが個別に支援物資供給を続けているものの、一部の地域では物資が不足し始めており、被災者全員に物資が行きわたらない状況が見られ始めている。降雪のため、思ったような支援ができなくなり始めており、NGOの間には焦りの色が強くなっている。(25日付The News International紙電子版)

○テント村移転に住民が反対
(バーグ) アーザード・ジャンムー・カシュミールのバーグ地区で、NGOにより設置されたテント村をAJK政府が移転しようとしたところ、そこに住む住民から移転反対の声が上がり、政府との間で小競り合いが生じた。AJK政府は、現在のテント村が、AJK政府の建物に近いことを理由に移転しようとしたが、住民が準備不足などを理由に反対したもの。(25日付BBC Urdu.com)

24日付
○2年間で40億ドルを復興支援に活用
(イスラーマーバード) ムシャッラフ大統領が、ボランティア活動を支援する会議で基調講演を行い、その中で、地震による被災者支援、地域の復興に当たり国際社会から受けた拠出額のうち40億ドルを向こう2年間で活用すると発表した。被災地域を、地域再生のモデル地区として、これまでどおりもしくはそれ以上のインフラを整備し、より快適な生活を送れる地域作りを目指していくとの方針を発表した。同会議にはアズィーズ首相も出席した。
 また、19日に開催された、85の国と機関が参加した支援国会合での支援総額が、61億ドルに達したことをあわせて発表した。(24日付Daily Jang紙電子版)


23日付
○オーストラリアが更なる震災支援を提案
(イスラーマーバード) パキスタン訪問中のハワード豪首相が、アズィーズ首相とイスラーマーバード市内で会談し、会談終了後の共同記者会見の席上、10月8日の地震の被災者に対する更なる支援を提案した。オーストラリアはこれまでに総額1080万ドルを拠出している。また、パキスタンとインドがカシュミール問題の解決に向け努力していることにも触れ、こうした努力が実を結ぶことを期待すると語った。(23日付The News International紙電子版)

○北西辺境州の死者数は2万2625人
(アボッターバード) サイヤド・シャキール・フサイン少将(被災者支援担当)が、マーンセヘラーの軍駐屯地で共同記者会見を実施し、北西辺境州内の被害につき、死者が2万2625人、負傷者4万139人に上っていることを公表し、州内の総被災者数が324万7916人に達していると語った。最大の被害が出たのはバーラーコート地区(Balakot Tahsil)で、同地区内だけで1万4088人が死亡している。(23日付The News International紙電子版)

○アンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピットが被災地を訪問へ
 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使を務めるアンジェリーナ・ジョリーが、パキスタンでの地震による被災地を近く訪問すると発表した。また、ブラッド・ピットも個人的に訪問に同行することを発表した。両氏は現在「Mr. & Mrs. Smith」で競演中。(23日付BBC World South Asia版)

22日付
○被災者への補償金総額を800億ルピーに大幅増額
(ラーワルピンディー) パキスタン政府は、当初発表していた地震による被災者への補償金を総額800億ルピー(約1600億円)に増額することを決定した。ムシャッラフ大統領が議長を務める連邦支援委員会で、北西辺境州首相及びアーザード・ジャンムー・カシュミール首相の要請により決定されたもので、両地域での被災者に対しては各家族に対し12万5000ルピー(約25万円)が支払われることも決まった。この額はこれまでに支払われた2万5000ルピー(約5万円)に上乗せされる。それ以外に新たに家を建設する場合に政府が決定した耐震構造を採る場合は2万5000ルピーが加えられることとなり、最大で総額17万5000ルピー(約35万円)が各被災家庭に支払われる。(22日付The News International紙電子版)

21日付
○被災地域で環境・水質改善計画開始
(イスラーマーバード) マリク・アミーン・アスラム・ハーン環境相は、被災地の環境、水質改善のための包括的な計画をパキスタン政府が準備しており、寒さをしのぐためにLPガスを供給することになったと語った。寒さをしのぐためには薪を燃やさねばならず、そのために樹木を伐採すると、環境に影響が出るとの考えからであると説明した。また、被災地での瓦礫などが適切に処理されなければ、数千万の人に影響を与えかねない。
 国連環境計画(UNEP)は、初期調査報告書を提出し、その中で材木ブローカーなどの暗躍による必要以上の樹木伐採を、パキスタン政府は止めなければならないと指摘している。
また、一方、カナダからの支援チームからは水の供給にも支障が出ており、早急な対策を採るようにとの要請が出されている。彼らも、被災地の環境破壊を危惧している。
 そうした点からも、樹木伐採は極力避けなければならず、ハーン環境相の言葉を借りれば、今回の地震でもっとも被害を受けたのは、被災地にあった森林であるとも言える。(21日付BBC Urdu.com)


○被災者は普段の生活の復旧を要望
(ムザッファラーバード) 支援関係者や被災者は、19日に開催された支援国会合での国際社会からの総額58億ドルに上る支援表明を歓迎しているが、その一方で、橋や学校の復旧に焦点を当てるだけでなく、被災者ができるだけ早くこれまでどおりの生活を営めるような支援を要望している。
 被災者の一人は、「支援がムザッファラーバードや都市部に集中してしまっていて、それ以外の被災者に対する支援との差が大きい」と語り、山岳部での被災者や周辺の農地被害まで関心が払われていない現状を訴えた。(21日付The News International紙電子版)


○バットグラーム近郊で余震
(ペシャーワル) 20日午前、シャーングラーおよびバットグラーム近郊で余震が発生し、現地からの情報によると2分程度揺れが続いたという。10月8日の地震で大きな被害が出たアラーイー渓谷では、なかなか収まらない余震のため、被災者の間に再び恐怖感が広まっている。
 揺れは、観測によるとマグニチュード5で、マーンセヘラーやペシャーワルなどでも感じられた。(21日付The News International紙電子版)


20日付
○国際社会が、総額58億ドルの支援を表明
(イスラーマーバード) 19日にイスラーマーバード市内で開催された復興支援国会合で、パキスタンが要請していた52億ドルを上回る、総額58億ドルに上る支援を国際社会から表明していただいたと、アズィーズ首相が記者会見で発表した。会議には約50の国と国際機関が出席し、冒頭アナン国連事務総長が「人を守る努力を継続しなければならない」と演説した。
 日本政府からは塩崎外務副大臣が出席し、1億ドルの追加支援(円借款)を発表した。最大の供与を表明したのは、アジア開発銀行及び世界銀行で、それぞれ10億ドル(額にはこれまで供与したものも含む)の拠出を表明した。またイスラーム開発銀行が5億100万ドルの拠出を表明した。
 また、ムシャッラフ大統領は、被災地での教育機関再建に6億1400万ドルを必要とするなどとした復興計画を公表した。(20日付The News International紙電子版)


○各国・機関による拠出表明額
(イスラーマーバード) 19日に行われた支援国会合で主要参加各国・機関が表明した拠出額(既に支払済額も含む)は以下のとおり。
・アジア開発銀行 10億ドル
・世界銀行 10億ドル
・サウディアラビア 5億7300万ドル
・米国 5億1000万ドル
・イスラーム開発銀行 5億ドル
・中国 3億2600万ドル
・イラン 2億ドル
・トルコ 1億5000万ドル
・フランス 1億2400万ドル
・英国 1億2000万ドル
・日本 1億2000万ドル
・欧州連合 1億1000万ドル
・ドイツ 1億ドル
・アラブ連合 1億ドル
・クウェート 1億ドル
・インド 2500万ドル
・アラブ首長国連合 100万ドル
・シンガポール 30万ドル(20日付DAWN紙電子版)


19日付
○イスラーマーバードで支援国会合開催
(イスラーマーバード)パキスタン外務省によると、19日に開催される会合に出席の意向を表明しているのは、25カ国、30機関などで、イスラーマーバード滞在中のアナン国連事務総長は、アズィーズ首相に対し全面的な協力を行うことを確約した。(19日付The News In ternational紙電子版)

18日付
○24人がインド側からパキスタン側のカシュミールへ
(チャコーティー) 10月8日の地震のため、ムザッファラーバードからスリナガルへのバスでインド側に入域して帰れなくなっていたパキスタン側のカシュミール住民24人が、チャコーティー・ウリ間のチェックポストを通ってパキスタン側に戻った。一方、10月30日の印パ協議で決定された被災者支援のための住民の往来については、いつになるのか見通しが立っていないままの状態が続いている。(18日付The News International紙電子版)

○アナン国連事務総長が、ムザッファラーバード訪問へ
(イスラーマーバード) 19日にイスラーマーバード市内で開催される支援国会合出席のため、アナン国連事務総長が17日にパキスタンに到着した。18日には被災地の中でももっとも被害が大きかったムザッファラーバードを訪問し、19日の会合では、国際社会に対し、継続的な支援の要請を行う。パキスタン政府は総額52億ドルの支援が必要になるとしており、国際社会がどの程度応じるかに注目が集まっている。(18日付The News International紙電子版)

○国家救援委員会委員長の記者会見要旨
(イスラーマーバード) イスラーマーバード市内で国家救援委員会委員長が記者会見を実施した。要旨は以下のとおり。
 1.これまでに子ども100人以上を含む650人の被災者が臓器の摘出を受けている。
 2.12万8000人以上の負傷者が、現在も各地の病院で治療を受けている。
 3.これまでに46万張のテントの配給が完了しており、23万張のテントも配給できる段階にあり、11月末までには50万張が配給完了する見込みである。
 4.各地では道路が復旧しており、支援物資の配給が行いやすくなっているが、ノウセヘリー地区では道路復旧が遅れている。
 5.ハッティヤーンには、震災孤児や未亡人となった人向けのシェルターが設置され、1000人を収容できる。現時点では約200人が収容されている。
 6.パキスタン政府は、国際社会から24億6000万ドルを拠出するとの約束を取り付けているが、現在までに実際に拠出された額は、2億1120万ドルにとどまっている。(18日付BBC Urdu.com)


17日付
○カシュミール住民による実効支配線往来が実現へ
(イスラーマーバード) 17日、ハージープール・ウリ間で、10月30日の印パ協議に基づいた実効支配線をはさんでの住民の往来が始まる。しかし、手続きの遅れ等の理由で、インド側からパキスタン側への一方のみが実現した。今回パキスタン側に入る予定のカシュミール住民は83人の予定。パキスタン政府は、相互の往来を実現させるべく努力したが、政府による往来希望者リストの提出が14日にずれ込んだため、インド政府を非難するものではないと説明した。(17日付The News International紙電子版)

○国際社会の支援表明を期待:ムシャッラフ大統領
(ラーワルピンディー) ムシャッラフ大統領は、19日にイスラーマーバードで開催予定の支援国会合に先立ち、パキスタン政府が復興支援に必要だと説明している総額52億ドルに近い支援表明が国際社会からなされることを期待している、と述べた。パキスタン政府は、総額52億ドルのうち、35億ドルが被災地の再建に、15億ドルが現在進行中の被災者救援に、また1億ドル程度が被災者の定住に向けて必要だと説明しており、国連や世界銀行、アジア開発銀行と共に算出した額であるとしている。また、パキスタン政府からは、すでに被災者に向けた総額200億ルピー(約400億円)の補償金拠出を発表している。
 19日の支援国会合にはアナン国連事務総長も出席が予定されており、国際社会がどのような支援策を提示するのか注目される。(17日付The News International紙電子版)


16日付
○5カ所目で実効支配線開放
 印パ双方が開放で合意していた実効支配線をはさんだ5カ所目が開放された。ハージープール・ウリ間で、支援物資の引き渡しが実現したが、手続きの遅れのため、今回も住民の往来は実現しなかった。(16日付BBC World南アジア版より)

○地震に対する復興支援は、テロ対策にも関連している:ムシャッラフ大統領
(ワシントン) 米ABCテレビとのインタビューに応じたムシャッラフ大統領は、地震での被災者に対する継続的な支援は、カシュミール地方でのテロ対策にも大きな貢献となるとに認識を表明した。同インタビューで、パキスタンが総額約50億ドルに上る支援(うち35億ドルが復興に向けられる)を必要としており、米国がそのうち1億5600万ドルと975人の軍人を派遣していることに謝意を表明した。
 また19日に控えた支援国会合に先立ち、ムシャッラフ大統領は在パキスタン各国大使らに当面のパキスタン政府による復興の計画および方針を説明し、国際社会および機関に対し、継続的な支援を要請した。現時点では世界銀行、アジア開発銀行、国連がパキスタン政府と共に復興への中心的な役割を果たしており、今後も各国からの支援が透明性の高い運用を行うことをあらためて確約した。(16日付The News International紙電子版)


○国連総会が、地震被害に対する迅速な支援を要請
(国連) 国連総会が、各国に対し、パキスタンでの地震に対する支援を可能な限り早急に実行するよう、要請した。ムニール・アクラム駐国連代表部パキスタン大使が提案した案件に対し、国連総会が応じたもので、191カ国が加盟する総会で議決が行われ、アナン国連事務総長が、支援が迅速に行われるようにとの観点から、支援対策特使を任命することとなった。支援は加盟国中137カ国が表明しており、パキスタン政府は総額50億ドル程度が必要だとしている。(16日付The News International紙電子版)

15日付
○実効支配線が4カ所目で開放
(ムザッファラーバード) 被災者支援を目的とした実効支配線開放が4カ所目で実現した。4カ所目となったのはタッターパーニー・メーンダル間で、記念式典では印パ双方の代表者が握手を交わした。またトラック2台分の支援物資がインドからパキスタンに引き渡されたが、今回も書類上の手続きの煩雑さから人の往来は実現しなかった。  また、パキスタン政府は、インド政府からの申し入れを受け入れ、実効支配線開放を1週間に1度とすることを発表した。当面の開放スケジュールは以下のとおり。
・ノウセヘリー・ティートワール(土曜)11/19、11/26、12/3、12/10
・ラーワラーコート・プーンチ(月曜)11/21、12/5
・タッターパーニー・メーンダル(月曜)11/28、12/12
・チャコーティー・ウリ(木曜)11/17、12/1
・ハージープール・ウリ(木曜)11/24、12/8
 記者会見の席上、開放の頻度をこれ以上増やすことは現状では困難であると言明した。(15日付The News International電子版)


14日付
○インド、パキスタンが実効支配線を往来する人のリストを交換
(イスラーマーバード) パキスタンとインドが、実効支配線を往来するカシュミール人のリストを交換した。パキスタン外務省報道官によると、インド側から入域を予定している80人に対し許可証を発行し、パキスタン側からは70人が希望を出したという。しかし現時点では、実効支配線がいつ開放されるのかは未定のまま。(14日付BBC Urdu.com)

○ナーラーン渓谷でも降雪。車両の往来に障害
(ムザッファラーバード) ムザッファラーバードよりも北に位置するバーラーコート、ナーラーン、カーガーンなどでは、雨が時折雪に変わるなど悪天候が続いた。そのため、救援活動にも大きな影響が出、降雪のため車の往来ができなくなった。テントが不足している地域は今も多いが、冬の到来とともに、救援活動にいっそうの遅れが出ることが懸念される。(14日付Daily Jang紙電子版)

13日付
○激しい降雪のため、救援活動が中断
(イスラーマーバード) 被災地周辺で激しい降雪があり、救援活動ができず、被災者が厳しい寒さの中で救援物資が届かない状態におかれることとなった。国連の推計によると、すでに降雪が観測されている高度以上に居住している被災者は、カーガーン渓谷に約6万人、アラーイー渓谷に約10万人いると見られる。また軍当局によると、毎日約1500人程度がマーンセヘラーまで避難してきており、国連人道支援室(UNOCHA)は、被災地での水質改善を急務であると訴えている。

12日付
○実効支配線が3カ所目で開放
(イスラーマーバード) 10月30日の印パ協議で決定した実効支配線が、3カ所目で開放された。開放されたのは、ティートワール・ノウセヘリー間で、救援物資の移動は活発に行われているものの、人の移動については、未だ始まっておらず。(12日付The News International紙12時30分更新)

○ダッカ市内で第13回南アジア地域協力連合首脳会議開催
(ダッカ) 2004年12月末に開催予定だった第13回南アジア地域協力連合首脳会議がダッカ市内で始まった。インド洋大津波などのため、開催が2度にわたり延期されていたもので、最大の議題は南アジア自由貿易圏(South Asian Free Trade Area: SAFTA)設定への合意だが、津波および今回の地震への支援も重要な議題の1つへ。会議は2日間の予定。(12日付BBC Urdu.com)

11日付
○23億ドル超の外国からの支援を確保
(イスラーマーバード) 連邦救援委員会(Federal Relief Commission: FRC)が10日発出したプレスリリースによると、パキスタン政府がこれまでに諸外国・機関などから2億ドル超の現金を含む、23億ドル超の支援を得たことが判明した。また、パキスタン国内からは約54億ルピー(注:約108億円)がパキスタン中央銀行に寄せられているという。
 同委員会によると、11月10日現在の地震による犠牲者は7万3294人、重傷者が6万9344人、負傷者が5万8896人に上っている。こうした被災者に対し、パキスタン政府はこれまでに総額14億ルピー超(注:約28億円)を補償金として支払っている。また約34万張りのテント、約300万枚の毛布、2900トン以上の医薬品などが供給されている。
 道路の復旧については、ニーラム渓谷側では、ムザッファラーバードから13.2kmまでは復旧が終わっており、デーオリアーン(Deolian)までの33kmは家畜による支援物資運搬が可能な程度に復旧が進んでいる。またジェヘルム渓谷側では、ハッティヤーン・バーラー(Hattian Bala)までの59kmおよび実効支配線の開放地点であるチャコーティーまでの復旧が完了しているという。(11日付The News International紙電子版)


10日付
○被災地でコレラ患者増加の危険
(ムザッファラーバード) 被災地でひどい下痢症状を訴える患者が増加しつつあり、医療チームがコレラの可能性を疑い、調査を開始したと、国連および世界保健機関(WHO)が発表した。
 被災地では水質改善が遅れており、さまざまな体調不良を訴える被災者が増加している。調査団によると、ひどい下痢症状はコレラを疑うべきだが、正確な判定には、より詳しい検査が必要となるとの見解を発表している。(10日付The News International電子版)


○復興は3年以内に:アズィーズ首相
 (イスラーマーバード) アズィーズ首相がイスラーマーバード市内で記者会見に応じ、政府が当初発表していた復興計画を5年から3年に短縮すると発表した。9日は祝日であったが、さまざまな支援関連会合に出席し、世界銀行などにあらためて支援要請を行うとともに、被災者への補償金は11月30日までに支払うと明言した。(10日付The News International電子版)

9日付
○ウリ・チャコーティー間を開放
(チャコーティー) ラーワラーコート・プーンチ間に続き、チャコーティー・ウリ間の実効支配線をまたいだ往来が開始された。救援物資についてはアーザード・ジャンムー・カシュミール側に搬入されているが、人の往来は複雑な手続きのため、まだ始まっていない。(9日付The News International電子版速報)

○オーストラリアが、医療チームをパキスタンに派遣
 ハワード豪首相が、140人からなる医療チームをパキスタンでの被災者のために派遣すると発表した。(9日付The News International電子版速報)

8日付
○パキスタン政府が被災者に対し200億ルピーの拠出を決定
(ラーワルピンディー) パキスタン政府は10月8日に発生した地震の被災者に対し、総額200億ルピーの補償金を支払うことを決定した。ムシャッラフ大統領が議長を務め、アズィーズ首相らが出席した会議で決定されたもので、家屋の倒壊に対して2万5000ルピー、家族を失ったものに対し10万ルピー、負傷者に対し、ケガの程度に応じて2万5000〜5万ルピーを支払うことが発表された。(8日付The News International紙電子版)

○地震による死者は8万6000人か
(イスラーマーバード) アジア開発銀行および世界銀行が中心となり、国際協力銀行(JBIC)なども参加した地震被害調査報告書によると、死者は8万6000人に達し、負傷者は10万人を越えている。同報告書によると、北西辺境州内では2366km、アーザード・ジャンムー・カシュミールでは1471kmの道路が損壊し、北西辺境州内の3680の学校、アーザード・ジャンムー・カシュミールの3517の学校が倒壊していることが報告されている。今回の報告書は11月19日に開催される復興支援国会合で正式に発表され、国際社会に対し、さらなる継続的な支援を呼びかける予定という。(8日付The News International紙電子版)

7日付
○ラーワラーコート・プーンチ間の実効支配線開放:住民の横断は許されず
(ティトリーナート) 10月30日にイスラーマーバードで開催された協議での合意に基づき、ラーワラーコート・プーンチ間の実効支配線が、復興支援を目的として開放された。しかし、書類上の手続きの関係から、実際に同支配線を越える住民はいなかった。パキスタン側では、実効支配線に近づこうとする住民に対し警察が発砲し、住民との間で小競り合いが見られた。警察側は、付近には地雷が埋まっており危険だったので、注意を喚起するための発砲だったと説明した。
 一方、インド側では支援物資を満載したトラックが支配線付近に停まっており、物資のみがパキスタン側のトラックに積み替えられた。インド軍当局によると、今後も物資の供給は継続的に行われるという。(7日付BBC Urdu.com)


○実効支配線開放の準備完了:パキスタン外務省
(イスラーマーバード) 6日、パキスタン外務省は、10月30日の印パ協議に基づき、5カ所での実効支配線開放の準備が完了したと発表した。しかし、インド側の準備の遅れから、実際にはチャカン・ダー・バーグ(ラーワラーコートとプーンチを結ぶルート)のみが開放される見込み。また、インド外務省からは、横断予定者名簿も得られておらず、実際には、7日に実効支配線を越えて救援活動を行うものはいないと推測される。(7日付The News International紙電子版、6日付BBC Urdu.com)
(解説)10月30日の協議での合意では、実効支配線を越えるためには、ムザッファラーバード・スリーナガル間のバスによる場合と同様の手続きを行うことになっている。まず政府間で名簿を交換し、承認が得られた後、許可証が交付されることになっており、その手続きには通常10日前後を要する。したがって、横断予定者の名簿が提出されていない現時点では、実際に実効支配線を越えられるものはいないということになる。


6日付
○バーラーコート・カーガーン間の道路が開通
(バーラーコート) バーラーコートとカーガーンを結ぶ道路が、軽車両に限り通行できるようになった。120km長のこの道路では、10月8日に発生した地震により、253カ所で大小の地滑りが発生したため、復旧に時間がかかっていた。ようやくカーガーン渓谷の被災者にも救援物資が届けられるめどがついたことになる。ハザーラ県復旧担当責任者によると、同県内では復旧作業が大々的に行われているが、それでも15万張のテントが必要であるという。(The News International紙電子版6日14時40分更新)

○イスラーマーバード、ムザッファラーバードなどで余震
(イスラーマーバード) イスラーマーバードやムザッファラーバード、バーラーコートなど各地で余震を観測した。GEO TVによると、地震のマグニチュードは6.0、時間は午前7時12分だった。パキスタン気象庁によると、10月8日の地震発生以来最大規模の余震だった。(Daily Jang紙電子版6日7時40分更新)

○パキスタンが、開放予定の実効支配線付近5カ所に救援センターを設置
(イスラーマーバード) パキスタン軍が、実効支配線で印パ両国が開放に合意した5地区に救援センターを設置した。三軍統合広報局(ISPR)によると、救援センターには、救援物資の貯蔵施設、医療キャンプなども設置されている。開放される5カ所に通じる道路の一部は現在も工事が進んでいる。(6日付GEO TVホームページ)

5日付
(注)11月4日がイードゥル・フィトルにあたるため、パキスタンでは5日、6日は新聞休刊日。

○実効支配線の開放は、1カ所のみ:インド外務省
(デリー) インド外務省が発表した声明によると、予定どおり11月7日から解放される実効支配線を挟んだ往来は、プーンチ近郊のチャカン・ダー・バーグ(Chakan Da Bagh)の1カ所のみとすることが発表された。またウリ(Uri)は9日から、ティートワール(Titwal)は10日から開放されることになった。理由として、道路修復が進んでいないことを挙げており、修復が終わり次第、支援物資を優先的に往来させるとしている。(BBC Urdu.com5日18時40分更新)
 (解説)10月30日の印パ協議のあと発表された共同声明では、5カ所を11月7日から開放することが発表されていたが、10月29日のデリーでの自爆テロ事件(イスラーム過激派組織の関与が強く疑われている)を受け、「越境テロ」停止をパキスタンに強く要請し続けているインドが、実効支配線開放に警戒心を強めたことも影響していると考えられる。


○国連がF-16戦闘機購入延期を歓迎
(イスラーマーバード) 4日にムシャッラフ大統領がムザッファラーバード市内で、米国からのF-16戦闘機購入延期を表明したことを受け、国連が歓迎するとの声明を発表した。(The News International紙電子版5日14時20分更新)

○パソコン中継による被災地のインタビュー
BBCは金曜日、被災地ムザッファラーバードとの生中継を行った。その一貫として、パキスタン人口が多いイギリスの都市ブラッドフォードの小学生からの質問を伝え、被災者の生の声を世界に届けた。以下は小学生と被災者の質疑応答の一部である。

・(質問)地震が起きた時どのような気持ちでしたか?
「地震は悲惨なものでしたが、本当にひどいのはその後でした。窃盗、略奪‥、多くのよそ者がやってきて、弱りきった私たち市民からたくさんの金品や宝石類を盗んでいきました。」(ムハンマド・アフザール・チョウハンさん 会社員)
「あたり一面は死体と血でいっぱいでした。しかし私たちはムスリムであり、イスラームは私たちに、忍耐強く、またあわれみ深くあるようにと教えています。地震の後、ただ泣き続けるだけの人は一人もいません。なぜなら、辺りを見回して誰もが『私の悲しみなど他の人々にはおよばない。』と思ったからです。」(ルービーナ・バシールさん 22歳 公務員)

・(質問)国際機構や西側諸国は十分な支援を行っていると思いますか?
「救援は次から次へとやってきて、ここムザッファラーバードでは物資の不足はありません。しかし長期的な計画が全く見えないので心配です。もし物資がなくなったら…?もし世界のどこかでまた地震が起きたら…?人々の意識はすぐにそちらへ向いて、私たちは取り残されるでしょう。」(リズワーン・ズィヤーさん 28歳会社員)
「私は世界に問いたい。ここでは多くの救援活動が行われていますが、それも下火になってきています。他の国々の私たちに対する関心が薄れ始めているのを感じます。これはなぜですか?死者の数がまだアジア大津波よりも少ないからですか?」(イムラーン・ズィヤーさん 26歳)
「世界中からの救援に私たちはとても喜んでいます。見知らぬ人々からの思いやりをここまで感じたことはありません。私たちは誰も多くを望んでおらず、復興には何年もかかることは承知ですが、私は一つ質問があります。私たちの家をどうするのか、いつわかるのでしょう?私たちは、もし自分たちで家を建て直しても、誰かが壊しに来るのではないかと怖いのです。」(リズワーンさん)

・(質問)今一番必要な物資は何ですか?
「病院と鉛筆です。」(マリヤムさん 14歳 学生)
「何よりも、私たちの家を再建するための支援です。この都市を以前よりも更に大きくよいものにすることはできませんが、真摯な救援の手があれば、おそらく以前のような状態に復興させることができるでしょう。」(リズワーン・ズィヤーさん)
「私たちはかつてと同じように自分たちの足でしっかりと立ちたいのです。世界中から多くの人が救助にきて下さったことは大変嬉しいですが、私たちは物乞いになりたくはありません。そして今受け取っているクッキーやミルクのようなものではなく、きちんとした物資を必要としています。」(ルービーナ・バシールさん)

・(質問)テントの学校でどのように学んでいるのですか?
「テントの中はとても暑く、生徒でいっぱいです。私たちと一緒に授業をうけている子供たちの多くはこの付近の村々から避難してきた子たちで、都市にある私たちの学校のようなところに行ってなかったため、一緒に勉強することは難しいです。すべてうまくいくまで、まだ時間がかかりそうです。」(マリヤムさん)
「今までの先生がいなくて寂しいです。ここはとても暑いし、前はきちんと机の前に座っていたのに、今は直接床に座らないといけません。まわりの環境もとても変だし、すごく勉強しにくいです。」(サナーさん 12歳 学生)

・(質問)地震は二つのカシュミール(パキスタン統治下とインド統治下)の距離を近づけましたか?
「私たちは未だ家族や親類を探しているところです。どこにいるのか誰にもわかりません。これからどうなるかはまだ何も考えていません。」(リズワーン・ズィヤーさん)
「はい、確かに近づきました。私は純粋なカシミール人で、今回のことはカシュミール問題解決の糸口に繋がると信じています。」(トウフィーク・シャイフさん 32歳 教師)

・(質問)地震が起きたことで、何かよくなったことはありますか?
「はい。以前は裕福な人とそうでない人の間には大変な差がありましたが、今、この地震の後で私たちはより平等に近づきました。私たちはひとつの大きな家族として生きなければいけません。みんな繋がっているのです。」(ルービーナ・バシールさん)
「私たちは世界中から支援を受け、また地震の状況とはまるで戦争のようなものだと気付きました。他のどんな戦争でもそうであるように、私たちは立ち上がらなければならず、そして世界の人々からの救援は本当に不可欠なのです。」(トウフィーク・シャイフさん)
「永久に存在する物質など何もないことを学びました。何よりも重要なのは、目では見えないもの、人と人との間の絆です。建物は大事ではありません。すべて崩れ落ちてしまいました。お金を稼ぐこと、大きな家を建てること、これらになんの意味があるのでしょう?人を助けよ。人々のために生きよ。それが私たちの学んだことです。」(イムラーンさん)(5日付BBC South Asia.com)


4日付
○ムシャッラフ大統領が、F-16戦闘機購入延期を発表
(ムザッファラーバード) イードゥル・フィトルに際し、ムザッファラーバードを訪問していたムシャッラフ大統領が、被災地の復興支援を優先するため、米国からの購入を予定していたF-16戦闘機購入を延期する意向を表明した。購入資金を復興に回すためと説明している。(4日付The News International紙電子版)

○救助隊、辺境地域への到達に尽力
(ムザッファラーバード) ラマザーン(断食)月の最終日である昨日、 救助隊は地震以来とり残された数十の村々へのヘリコプターによる到達を試みた。「問題は移動手段である。そのため我々は国際団体、各国にヘリでの協力を強く嘆願しているのだ。」とパキスタン軍のザファル・アリー准将は述べた。国連は経済的に余裕のある国々にいっそうの資金援助を要請するとともに、今集まっている資金は緊急に必要な金額の4分の1にも満たないと強調する。
 ムザッファラーバードでは、断食明けを祝う大祭イードゥル・フィトルを控えながら、路上は閑散としている。「イードなんて。」と、地震で18歳の息子を亡くしたナスィーマ・ビービーは言う。「私は家を失い、病気の夫を助ける一家の稼ぎ手であった長男も失った。そんな私にイードが一体何の意味をもつというの?」
 イードゥル・フィトルの前日は一年で最も忙しい日の一つであり、食べ物やお菓子、服などの買い物、また散髪や女性の手にハナという装飾を施すため、人々は山の付近から町へやって来る。しかし今年、何万という犠牲者が出た街で、人々は身体的また財政的に多くを失い、とてもイードを祝う心境ではないという。(4日付The News International紙電子版)


○全国で厳粛にイードゥル・フィトルを迎える
(イスラーマーバード) 月齢監視委員会の発表により、パキスタン全国がイードゥル・フィトル(断食明けの大祭)を迎えた。しかし、今年は地震による甚大な被害が出ているため、厳粛に、簡素に迎えるべきとの雰囲気が全国に広まっている。ムザッファラーバードを始めとするアーザード・ジャンムー・カシュミールやバーラーコートなど北西辺境州を中心に、7万3000人を超える死者が出ており、華やかな雰囲気は見られない。各地では、犠牲者のために特別な礼拝が行われた。(4日付DAWN紙電子版)

○被災地域で病気が広がる懸念増大:国連による警告
(ムザッファラーバード) 被災地での救援活動に従事している国連が、被災地への救援物資到着の遅れなどが理由で、被災者の間に肺炎にもなりかねない呼吸器疾患が広まっているとの報告を公表した。また北西辺境州内では、汚染された水が原因と見られる細菌性下痢などにより7人が死亡したとの報告がある。破傷風患者も増えており、救援物資到着の遅れは、冬の寒さが酷くなるにつれ、深刻さを増している。(4日付DAWN紙電子版)

3日付
○復興には数十億ドルが必要。国際社会に対しさらなる支援を要請。
(イスラーマーバード) ムシャッラフ大統領は、被災地域での救援、復興のために数十億ドルの支援が必要であるとして、国際社会に対し継続的な支援を要請した。
 ムシャッラフ大統領は、支援関係者との会合で、『効率的な復興のためには、被災地域に関する網羅的なデータベース作成が必要で、復興に際しては建築物の耐震構造にもよりいっそうの注意を払っていかなければならない。これからの復興に向け、パキスタンにとっては今こそ国際社会からの継続的な支援が必要である』などと述べ、冬が始まっている被災地域の可能な限り早急な復興に向けいっそうの協力、支援を要請した。(3日付Daily Jang紙電子版)

○ニーラム渓谷で地滑り:救援活動を行っていた11人が死亡
(ムザッファラーバード) イードゥル・フィトル(断食明けの大祭)用の食糧などをニーラム渓谷に向け運んでいた支援関係者が、同地で発生した地滑りに巻き込まれ、11人が死亡した。犠牲者の氏名等は不明のままで、全員が川でおぼれたと見られる。(3日付Daily Jang紙電子版)

2日付
○震災による死者が7万3000人超に
(イスラーマーバード) パキスタンで10月8日に発生した地震による死者の総数が7万3276人に達した。また地震発生から3週間が過ぎた現在でもパキスタン側のカシュミールや北西辺境州内の41の村落には未だに救援物資が届けられない状況にある。先にアズィーズ首相は死者数を5万7000人と発表していたが、連邦救援委員会からは死者数の増加理由についての説明はない。同委員会委員長がイスラーマーバード市内で記者会見を実施し、これまでにカシュミール地域では31のテント村が設置され、1万7900人が、北西辺境州内では37のテント村に1万8000人強が収容されたと発表した。また、これまでに国際社会からの支援表明額が20億ドルに達したことも明らかにした。(2日付BBC Urdu.com)

○被災者に対する支援活動「熱意が下がってきているのか?」
(ラーホール) 地震の被災者に対する支援活動は国中で続いている。イードゥル・フィトル(断食明けの大祭)が近づくにつれ、そのお祝い用の物資を準備し始めている。しかし、その一方で地震直後ほどには、支援活動に熱意が感じられなくなってきたとの意見もある。ムシャッラフ大統領の呼びかけにより、人々はそれぞれにできる支援を行ってきた。誰が呼びかけたかはもちろん重要だが、最も重要な点は、誰のために、何のために支援を行っているかという点であることは言うまでもない。
ラーホールでも、当初は各家庭で義援金を集めたりしていたが、最近ではそうした活動も下火になってきており、ムシャッラフ大統領の呼びかけ以降も特に目立った活動はしていない。
しかしラーホールでも、今こそ支援物資が必要で、それも古着よりは現金の方が役立つはずで、継続すべきだとの声もある。パキスタン人の互助の精神は確固たるものがあり、北西辺境州では、表面的には目立った活動こそ見られないものの、NGOなどは現在も活発な支援活動を継続しており、州大臣の中には自ら進んで義援金集めに奔走している人もいる。表面的な状況だけを見ると、支援に対する熱意は下がってきているように見えるが、イードゥル・フィトルを控え、被災者の痛みは、パキスタン人自身が一番よくわかっているはずである。(2日付BBC Urdu.com)


1日付
〇地震により1万7000人の子供が犠牲に
ユニセフは、生き残った子供たちは負傷しているか、友人や先生を失ったトラウマに苦しんでいると伝えた。また、清潔な水やワクチンなどの適切な治療が受けられなければ二次災害による死者が出ると警告している。
パキスタン政府の予想によれば、北西辺境州では6700の、パキスタン管轄下のカシュミールでは1300の学校が倒壊したという。UNICEF長官は、今回の地震による子供達のトラウマは、昨年12月のアジア大津波で子供達が受けたものよりもさらに酷くなるだろうとの見解を示した。UNICEFはおよそ2万人の子供達が、負傷や手足の切断による身体的な後遺症に苦しむだろうと予想している。(1日付BBC South Asia.com)


○テント村出現。混乱も広がる
(シンキヤーリー) 次から次へと移動させられ、人々の中には疲れ果てて墓地にテントを設置するものも現れ始めた。彼らは、行く場所もなければ、彼らをガイドするものもいない。
「我々はアフガニスタン難民以下だ。ここは我々の国なんだ。この国に住む権利がある」アラーイー渓谷から来た被災者は憤る。パキスタン政府は、被災地からの移住を進める一方で、具体的な策を打ち出せないままでいる。カラコルム・ハイウェー上には救援キャンプが設置されているが、それらは医療目的であり、定住に向けたテント村は非常に遠い場所にしか設置されていない。
 アボッターバード近郊のハヴェーリヤーンにも100程度のテントから成るテント村ができたが、この場所は平原で風が強く非常に寒い。テントは薄い布でできているし、何よりも定住に向けたインフラなどのアレンジが全くなされていない。また、教育や健康管理などにも注意は払われていない。山を下りてきた人々は保守的な人が多いにもかかわらず、テントを他の家族と分けるよう政府が指示していることも大きな問題である。
「しかし、家族を連れて行ける場所は他にない。定住に向けたテント村があるとは聞いたが、非常に遠くそこまで行く手段もない。」被災者には混乱が広がっている。(1日付The News International紙電子版)

○19日に支援国会合開催へ
(イスラマバード) ムシャッラフ大統領が、パキスタン政府による被災者移住計画があることを発表した。救援活動はまもなく一区切り付け、今後は復旧・復興活動に重点が移るとの認識を表明する一方、復興にどの程度の資金が必要になるのか不明であり、11月19日に予定されているイスラマバードでの支援国会合までに50億ドルに達するとも言われる試算を発表すると語った。
 19日の支援国会合には、国連のほか、世界銀行、国際通貨基金、アジア開発銀行、イスラーム開発銀行など多数の国・機関が参加を予定しているが、どのくらいの支援表明があるかは不透明である。(1日付DAWN紙電子版)


独自取材
地震発生後、本学学生らが、在留邦人やパキスタン在住の友人らに連絡を取ったところ、以下のような話を聞くことができた。

◎ラーホール在住のパキスタン人の大学生に話を聞いたところ、現地で最も必要とされているのは毛布、食料品、薬品であるとの話だった。

◎パキスタンの国民の9割以上がムスリム(イスラーム教徒)で、10月5日から1ヶ月間、ラマザーン(断食月)に入っているが、断食明けの祭り(小イード)を祝える気分にないという声が挙がっている。一方で、首都イスラーマーバードの高級ホテルでは、毎夜断食明けのパーティーが開催されているのも実情である。

◎日本国内のパキスタン人社会でも義捐金を集めようという声が挙がっている。在テント、食料であるとのことだった。京パキスタン大使館関係者も日本国内各地のパキスタン人コミュニティに対し支援を呼びかけている。

◎今回の地震により、ラーホール市(パンジャーブ州の州都。震源の南南東約300km)にあるパンジャーブ大学オールド・キャンパスの建物の一部が損壊した。損壊した建物は、築後約100年を経過した、レンガ造りのもの。

◎ラーホール市内では、19世紀末に建造された中央郵便局やYMCAビルなどのみならず、築後約30年の電信電話局や、2年前に新築されたラーホール空港にもひび割れが生じた。

◎イスラーマーバード在住の邦人は、今回の地震の大きさについて、「震度5程度に感じた」と連絡してきた。また、同市内で倒壊したのはマールガッラー・タワーのみであることから、人災の可能性が高いのではないかという話が出ている。

◎本学学生が9月初めにイスラーマーバードの倒壊したマンションに隣接する同じ形のビルに行ったが、そのビルの1階部分は部屋がなく、柱のみで造られていた。



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