「価値観を変えてくれたデンマークの自然と人々」      宮本 凌介 (留学時3年生)

【留学先学校名】
Brandbjerg Højskole(2020年1月~3月)

 留学を終えて、私は自然をもっと好きになることができました。そうしてくれたのはデンマークをはじめとした北欧の自然と、それを楽しむデンマークの人たちです。
 私は2020年の1月から3月までの3か月間、ユラン半島の東側のVejleという町の近くにあるホイスコーレに滞在していました。学校の名前はBrandbjerg Højskoleといい、Vejleの駅からは車で20分程度の場所でした。いくつか選択できるコースがあったのですが、私はいちばん興味がわいたアウトドアコースを選びました。
 アウトドアコースでは、地図とコンパスを手に学校のそばにある山を走り回ったり、マウンテンバイクで遠征をしたりと、日本とは違うデンマークの自然の中でさまざまな活動をしながら体の使い方やアウトドアに関する知識を学びました。



<コペンハーゲン中央駅での写真。列車に自転車をそのまま載せることができます。自転車乗り兼鉄道ファンにはとても嬉しい。>


<毎週楽しみだったCooking over Fireの授業。焚き火でいろんな料理を作りました。なかでも一番おいしかったのはカレーでした。(デンマークでお米というとタイ米を指すようです。はじめは驚きましたが、何度も食べるうちに慣れました。)>


 なかでも印象に残っているのは、ノルウェーにある国立公園での一週間のアルパインスキー合宿です。冬学期(1~3月)のまとめとして各コースで一週間のプログラムが用意されており、その週は選択コースの授業のみをおこないます。アウトドアコースでは、雪山での一週間のルート構築や必要なカロリーの計算を考慮した食事、備品の運搬などほぼすべての仕事が生徒に任されたプログラムが課題として与えられました。アウトドアが好きな自分としては、一週間も屋外で過ごせることや自分たちでルートを決めてナビゲーションする旅を海外で経験できることに心を弾ませていました。しかし、木々の葉が落ち、湖が凍る土地での旅はそう簡単ではありませんでした。なんといっても気温が低く、夜にいたっては氷点下でした。スキー板を履いて雪山を進む中で、雪がシューズの中に入ったことで、動くのを止めたとたんに体温が奪われていきました。私はあまりの寒さに元気を失っていましたが、そんななかでもデンマークの人たちは自然を楽しんでいました。思い返せば、彼らは学校のそばの山を駆け回る時も、芝生の上でゴロゴロするときも、自然の中にいると子どものように振舞っていました。ノルウェーの厳しい寒さの中でもそれは同じで、初めての経験を全員が楽しんでいました。その姿を見て、私も一生に一度の経験だからせっかくなら苦労ではなく楽しさとして、この状況をとらえようと考えるようにしました。吐いた息が瞬時に凍るような-18℃の夜にタープと寝袋で寝た日もありましたが、焚き火の光を反射した吐息が、真っ暗な夜空に消えていく情景には心を奪われました。日差しが強く、目が痛くなるような日中の雪の照り返しも、美しい雪と青空の対比を見せてくれているようで、言葉を失うほどの絶景でした。一週間の行程を終えて、励まし合いながら山を越え、自分の考え方をいい方向に変えてくれた仲間たちには感謝しています。
 


<幸せの国デンマーク。コンセントも幸せそうです。>



<スキー合宿中のロッジでのひと時。パンケーキとコーヒーで冷えた体を温めます。みんなありがとな!>


 3月17日、学校からすべての生徒がいなくなりました。留学生も学校には滞在できないという判断によるものです。予定の半分程度の滞在となりましたが、後悔はありません。一週間だけでも自分の考え方に進歩が見られたのなら、それでいいと思っているからです。「半年留学します」と言ったときに、「短いな」と言ってきた人もいました。しかし問題は国でも期間でもなく、「帰国した時に何を持ち帰ったか」だと思います。簡単に言えば「成長」です。それはひとりひとりが心の内に秘めているだけでもいいと思います。なんでも他人と比較して喜んだり落ち込んだりするのではなく、自分がどう思うかという観点を大切にできる人でいてほしいと思います。実はこれも気付いたことのひとつです。