留学体験談③  「交換留学体験」  櫛木 まどか(学部3年)





私は2009年8月から2010年6月まで、大阪大学の交換留学制度でコペンハーゲン大学に留学しました。留学中の一年は、「長いようであっという間」とよく言われますが、私の場合、「長い」と感じたことはほとんどないほど、この貴重な一年はあっという間でした。


コペンハーゲン大学での所属は人文学部歴史学科でしたが、登録して試験を受けたのは、主に、英語で行われる大学全体の留学生用授業でした。しかし私はやはりデンマークに来た以上、デンマーク語でデンマーク人と勉強したいと思っていたので、歴史学科の先生の許可をもらって聴講生としていくつかの授業に参加させてもらいました。とはいえ、一回2時間から4時間の、すべてデンマーク語での授業を理解するのは並大抵ではなく、一回の授業で学べることは決して多くはありません。しかしやはり授業の内容の多様さや視点は日本で学べるものとは全く違い、まわりのデンマーク人学生の積極さにも刺激されました。プレゼンテーション中心の授業も多くあり、歴史の授業では何回か実際に城や教会を見学しながらの授業もありましたが、1年生でも、そこで紙も見ずに重要な点をおさえながらすらすらと説明していく学生には驚かされました。


デンマーク語の授業は大学では初級の授業しか提供されないため、主に長期間住む人のために授業を行っている、学生より年配の社会人が多く通う語学学校に通いました。そうした学校の性質から、授業で扱う内容やクラスメートの人たちと話す中で、大学とはまた違う、実際のデンマーク社会を垣間見ることもできました。


交換留学の場合、コペンハーゲン大学への授業料を払わなくてもよい事などいろいろな利点がありますが、一番ありがたかったのは、大変だといわれている住居探しをしなくてよい点です。しかも私は幸運にも、大学のすぐ近くで設備も整った近代的な学生寮の部屋を提供してもらえました。そしてそれに加えて一番ラッキーだったのは、同じフロアのデンマーク人学生が楽しく親切な人たちばかりだったことでしょう。生活の基本的なことを教えてもらったり、みんなでの夕食会にさそってくれたりと、留学生活の大きな助けとなりました。


デンマーク語などというマイナーな言語を勉強しても何になるのだろうと思っている人も多いでしょう。事実、デンマーク語を日本で勉強していたと言うと、次には必ず「なぜ??」ときかれます。私自身、相手を納得させるような答えはなかなかできませんでしたが、留学してみて言えることは、やはりデンマークに暮らしてデンマーク人を知ろうと思うならば、デンマーク語がわかることはなにものにも変えがたいということです。デンマークでは英語ができれば生活していくことは可能です。しかしデンマーク語を学んでいると言うと、知らない人と積極的に友達になろうとはしないデンマーク人たちも関心を持ってくれ、彼らと一気に距離が縮まりました。


外国のことを勉強するという点において、決して留学だけがすべてだとは思いません。しかし、実際その国に「いる」ということ、日本では学べないことが学べるということ、そして日々小さな発見ができることは、留学でだけ味わえる貴重な体験だと思います。