留学体験談  「デンマークでのファームステイ」  三待 栞(留学時3年生)

【留学先学校名】
・Jyderupe Højskole (2017年9月~12月)
・ファームステイ


 私は2017年9月後半から約8か月半の間、デンマークに滞在していました。その間、9月から12月の半ばまでの2ヵ月半をフォルケホイスコーレで過ごし、残りの約半年間はWWOOFを利用した農場での住み込みボランティア(いわゆるファームステイ)をして過ごしました。ここでは主にファームステイについてお伝えしたいと思います。


                 <畑での草むしり>

 WWOOFとは、オーガニック農家とオーガニックに興味を持つボランティアをつなぐためのウェブサイトのことで、誰でも登録が可能です。WWOOFにボランティアとして登録すると、自分の条件に合ったオーガニック農場を探してコンタクトをとることが出来、交渉が成立すればそこで住み込みボランティアとして働くことが出来ます。ボランティアなので無給なのですが、1日5時間週6日の労働(受け入れ先によって多少の変動あり)の代わりに住む場所と食べるものを提供してもらえるので、実質ほぼ無料で外国に滞在することが出来るのが大きなメリットです。私はデンマークのオーガニック事情に興味があったのと、留学の費用を出来るだけ抑えたかったのでWWOOFを利用することにしました。


           <Samsøにはかわいらしいお家がたくさん>

 私は2カ所の農場でファームステイをしたのですが、特に長い間過ごしたのはSamsø島にある農場でした。Samsø島はデンマークの真ん中に位置する自然がとてもきれいな島で、島内の電力を全て自然エネルギーで賄っているなど、環境問題への取り組みが盛んなことでも知られています。滞在を始めたころは冬だったため、農場での仕事は家畜の餌やりやキッチンの補修工事、併設のビール醸造所でつくられた瓶ビールへのラベル貼りなどで、イメージしていた仕事内容とはかなり違いました。またこの農場では、ボランティア達にはホストとは別の専用の家が与えられるのですが、冬場のボランティアはほぼ私一人だったので、予想外に2ヵ月ほど一人暮らしをすることになってしまいました。これら仕事内容やステイの形態などは、ウェブサイトをきちんと読んだり、交渉の際に確認したりしておくべきだったと思います。けれど、「デンマーク語を上達させたい」という私の意思を大切にしてくれたホストは、デンマーク語の本やDVDを貸してくれたり、喋り相手としてお隣さんを紹介してくれたりと、一人暮らしでも可能な限りデンマーク語に触れられるよう工夫をこらしてくれました。特に私はこのお隣さんと仲良くなって、仕事が終わると毎日のように彼女の家にお邪魔し、お茶を飲みながらお喋りしました。また、クリスマスや大晦日、誕生日などの特別な日にはホストの自宅に招待してもらい、彼らと一緒にお祝いしました。このようにデンマーク人の家庭に入り込んで生の生活が見られるという点は、学校への留学ではなかなか得られない体験だと思います。


                <ステイ先の豚たち>  

 3月末から5月末まで、他の農場で過ごしたりヨーロッパ旅行をしたりして過ごした後、私は再びSamsø島に戻ってきました。ホストやお隣さんが「おかえり」と歓迎してくれて嬉しかったです。この頃には季節に合わせて仕事内容も変わっていて、畑の除草やタマネギ植え、イチゴの収穫やもみの木のジュース作りなど、やっと念願の畑仕事を体験することが出来ました。また、ほかのボランティアと一緒に働くのは、冬場に一人で働いていた時よりずっと楽しかったです。仕事後には彼らと散歩やサイクリングに行ったり、お茶しながら語り合ったり、ケーキを焼いたりしました。最後の数週間は帰国するのが嫌になるくらい楽しかったです。

 ファームステイを考えている人に対して私が言えることは、これは仕事であって休暇ではないのだということを理解したうえでチャレンジして欲しいということです。お金がかからず、労働時間も比較的短く、交換留学などと違って大量の課題も出ないファームステイ。ですが、農家の方は切実に労働力を必要としているからこそボランティアを募集しています。そして何より、やる気が起きない中で働くのは自分自身がしんどいと思います。農場での仕事はやはり体力的にきついこともあるし、汚れる仕事も多いし、冬場は寒いし、畑にはもちろん虫がいます。ホストの方でも各ボランティアに合った仕事を割り振ろうと工夫してくれるので、言語や体力に自信がなくてもそれほど心配する必要はありませんが、任された仕事をやり遂げようという気持ちは必要です。また、仕事が自分の能力に見合っていない、労働環境や生活環境に問題がある(または自分には合わない)などと感じる場合には、遠慮せずにホストに言うことも大切だと思います。私は自分の失敗を通して、無理して働くよりも問題をホストと共有して解決した方が仕事の効率がいいし、お互いに気持ちよく過ごすことが出来るということを学びました。

 デンマークで過ごした8か月半は、私にとって決して楽な日々ではありませんでした。けれど、色んな人と出会い、多くを考え経験した一年でした。帰国してからは、「もう一度デンマークに行きたい」という想いが私の原動力になっています。


       <農場近くのBesser Revという場所 両サイドに海>