留学体験談  「コロナ禍中の留学で学んだこと」  小森 那々海(留学時3年生)


【留学先学校名】
・Askov højskole(デンマーク政府奨学金制度を利用した短期留学)(2018年8月)
・Vraa højskole(2019年8月~12月)
・Uldum højskole(2020年1月~6月)

私はデンマークのフォルケホイスコーレ(以下フォルケ)に短期と長期で留学しました。今回は2019年8月からの長期留学について書いていきたいと思います。

 一校目のVraa højskoleはインターナショナルな学校で、授業は英語とデンマーク語両方で行われていました。私は音楽、デンマーク語、コーラスや楽典の授業を選択していました。音楽系の授業は、私以外全員デンマーク人だったので、デンマーク語のみで授業が進みました。音楽系の科目は元々少し音楽経験があったことから、演奏面や楽典の理論の理解には難しさは感じませんでしたが、日常会話では絶対に使われないような用語やその説明がデンマーク語で行われ、科目の内容理解以上にデンマーク語の理解につながりました。
 デンマーク語の授業は、外国人向けのものとデンマーク人向けのものがあり、当初外国人向けの方に参加していましたが、アルファベットから学ぶ初級者向けだったので、途中でデンマーク人向けのものに変更しました。デンマーク人向けのコースには、デンマーク人、小学校からデンマーク語を習うグリーンランド人、ノルウェー人がいて、かなりハイレベルでしたが、短編小説を書いたり女王様の新年のスピーチを感情をこめて音読したり、日本ではなかなか受けられない、アウトプットメインの授業でした。
 隔週で地域の方を招いて行われていた食事会、講演会では、様々な年代の方と話すことができました。本当の孫のようにかわいがっていただいて、クリスマスに食事に招いていただいたこともありました。ホームステイでなくても、このように地元の方と交流して生の文化を体験できるのが、フォルケの良さの一つだと思います。



 Uldum højskoleはVraaとは違い、デンマーク人が学生のほとんど、外国人も私たち阪大生以外は全員片親がデンマーク人であり、授業もすべてデンマーク語で行われる学校だったので、二校目ではデンマーク語漬けの生活を送りたかった私にはぴったりでした。また、この学校の特徴は、スポーツ系、座学系、芸術系に囚われず自由に、1、2か月ごとにカリキュラムを組み立てていく点です。私もデンマーク語以外の科目は、革細工、アクセサリー作りの授業など初めてのことにも挑戦しました。毎日クラスメートの顔ぶれが入れ替わるので、必然的にいろいろな人と話す機会があり、よく話す人のデンマーク語ばかり理解できるようになってきていた私にとって、よかったと思います。
 こちらでのデンマーク語の授業は、外国人向けで、個人ワークが中心だったので、卒論に役立ちそうな文献を読み、わからないところを質問したり、本の内容を簡単に説明したりしました。アクセサリー作りの授業などは工具の名前がわからずかなり苦戦しましたが、見よう見まねで何とかついていくことができました。
 また、この学校の学生はとても積極的で、自分たちで様々なイベントを企画して土日もプログラムがありました。授業ではないので自由参加ですが、積極的に参加するように心がけていました。



 3月から5月の間、フォルケも含めデンマークのすべての学校がコロナウィルスの影響で休校になりました。期間は2週間だけと当初は言われていましたが、結局2か月以上になり、寄せる身寄りがある人は全員寮から退去、学校再開まで戻ってこないように言われました。悔しく思いましたが、学校の早期再開を目指して学生自身が政治団体を作るなど、民主主義を重んじ自ら行動するデンマークの文化や国民性を感じられた出来事でもありました。また、当時デンマーク国内でマスクをつけている人はごく少数だったため、帰国後、マスクを着けていない人がほぼいない日本の状況に驚き、自分の考えや固定概念が、いかにメディアや周囲の環境に依存しているのかということを実感し、自分の「当たり前」を考え直すきっかけにもなりました。



 留学を通して、留学だけにかかわらず目的意識なしに漫然と過ごしているだけでは、十分に成長できないということを実感しました。留学という恵まれた環境にあっても、それに甘んじてただ毎日を送っているだけでは、実りある留学にはなっていなかったと思います。私は、語学力アップと現地でしか味わえない経験をすることを目的としていたので、単語帳での勉強など日本でもできることよりも、周囲との交流を優先しました。また、外国人だということで英語で話しかけられた時も、デンマーク語で話したいと伝え、自信がなく少々スムーズにコミュニケーションが取れなくても、英語に逃げずにデンマーク語で話すようにしていました。ネイティブ同士の超高速の会話に孤独感を感じることもありましたが、スピーチや放課後の時間で日本文化を紹介したり、有志バンドに参加したりすることで、少しずつ馴染めるようになり、このことで、コロナ休校後学校の日本人、外国人が減ってしまい心細く感じたときも乗り越えることができました。

 留学を検討されている方にはぜひフォルケに留学されることをお勧めします。学校からも生活面でもサポートを受けられ(病院に連れて行ってもらいました)、デンマーク文化に触れられる、さらに毎日デンマーク料理まで食べられるという、お得な留学方法だと思います!