
自分の声に耳をすませて
岩田 春乃(留学時3年生)
【留学先学校名】
・Vrå Højskole (2023年8月~2024年 6月)
大学入学時にその存在を知ったときからずっと憧れていたフォルケで過ごした1年間は、これまでの人生の中で最も「自分自身に対して素直に向き合った」日々でした。
私は、クリエイティブな空間にどっぷり浸かり、自分の手で色んなものを作ってみたいと考えたためフォルケへの留学を選択しました。そのため、数あるフォルケの中から応募する学校を選択するときは、①クリエイティブ科目(ファッション、アート、編み物、写真等)が充実しているか ②ものづくりの際の材料費が学費に含まれているか(授業のたびに材料費が追加徴収される学校もあると聞いていたため)という2つのポイントを重視していました。
私が選択したVrå Højskoleは科目数こそあまり多くないものの、ものづくりに自由に取り組める科目が充実していた点が魅力でした。1学期目はメイン科目としてソーイング&デザイン(裁縫)、アナログ写真、サブ科目としてNews room(英語ディベート)、アルバム(音楽アルバムを聴いて感想を話し合うだけのチル授業)、2学期目はメイン科目として引き続きソーイング&デザイン、アート、サブ科目としてグラフィック(版画)を取っていました。深夜早朝を除き教室はいつでも自由に使えたので、授業時間内に終えられなかった作業や授業の取組以外で自由に作りたいプロジェクトを好きなタイミングで進めることができました。アナログ写真では手作業でフィルムを現像したり、プロのモデルさんを撮影させて頂いたりと、本格的な経験をすることができて楽しかったです。アートではある程度課題が提示されていたものの、基本的には自分で好きなものを描いてよいという自由なスタイルだったため、描いてみたいものは全部描いてみよう!精神で、様々な作品の製作に没頭しました。音楽を聴きながら集中してキャンバスに向かっている時間がとても好きでした。
<スモーブローコンテストにて。食事も美味しかったです>
そして私が最も沼にはまったのがソーイングの授業です。ミシンで服やカバンを作る授業で、教室に置いてある生地や古着の端切れは自由に自分の作品に使うことができました。私はスカートに始まり、ショルダーバッグ、ズボン、シャツ、ドレス、袴などを作り、どの服も完成させたときに大きな達成感を感じたことを鮮明に覚えています。学期末には、クラスメイト全員が作った作品を披露するファッションショーも行いました。思い返せば、フォルケで過ごした時間の半分以上はミシンの前にいたんじゃないかと思います。また、通常授業とは別でデンマーク王室のパーティーに招待された女性のドレスと小物を作るプロジェクトに参加したり、ソーイングの先生に誘っていただいて上演予定だった舞台の衣装作りの仕事に関わらせて頂いたりと、沢山の貴重な経験をさせて頂きました。私は当初、半年ずつ2つのフォルケに行こうとしていたのですが、1校目のVråに2学期目も留まったのは、このソーイングの授業をまだまだやりたいという理由からでした。現地に行って学校を経験して、もっと極めたい・もっとこんなことがしてみたいと思うことがあったら、その心に正直になって、思い切って当初の予定を変更してみるのもありだと思います。継続したことで、同じように継続した友達との距離が近くなり、互いの進路についてなど深い話もできるようになったことが嬉しく思いました。
<ファッションショーの様子>
授業の充実度に加え、この学校のもう1つの大きな魅力が先生方の人柄でした。どの先生もユーモアと生徒への思いやりに溢れていて、生徒一人ひとりをよく見て良いところを引き出してくれるような雰囲気がありました。インターナショナル生のビザの手続きを担当してくださった先生は、手続きがスムーズに進むよう最後まで親身になって手伝って下さり、ビザ関連の不安が軽減されました。授業では生徒の自由な意志を最大限尊重しながら、適度にアドバイスをしてくださる環境を作ってくれていたと思います。パーティーやレクリエーションの場では生徒よりも準備ばっちりで楽しんだり、授業を生徒よりも先に抜け出してコーヒーブレイクをとったりする愉快な先生方と過ごす時間はとても楽しかったです。
<先生同士でありご夫婦であり音楽ユニットのおふたりの演奏にはいつもうっとり>
この学校はインターナショナル生の比率が高く、特に日本人は最も多い10人越えでした。留学前はデンマーク語でコミュニケーションを取りたいと意気込んでいたものの、実際はデンマーク語を理解できない友達が多く、英語を話す機会が自然と多くなる現実に最初は少し戸惑いました。しかし徐々にデンマーク語にこだわりすぎることをやめ、この期間は英語でのコミュニケーション力を伸ばせる良い機会だと考えられるようになりました。そして、英語の会話も存分に楽しむように心がけました。今となっては、実際の環境に合わせて柔軟に考え方を変え、インターナショナル色が強いことをポジティブに捉えようとしたことが良かったなと思えます。日本人の友達とは留学終了後も交流があります。留学して日本語で話す時間があるということにも最初は少し抵抗がありましたが、同じ国で生きてきても自分とは全く異なる背景や考え方を持った友達と語り合うことによる学びも沢山ありました。しかし、絶対にデンマーク語しか話さない環境で過ごしたいんだ!という人は、あらかじめフォルケのウェブサイトなどを確認したり先生にメールで質問をしたりして、その学校のデンマーク人とインターナショナル生の比率を確認したうえで学校を選ぶことをおすすめします。
長くなってしまいましたが、Vrå Højskoleで過ごした1年間は、常に自分との対話だったと思います。自分が何を好きなのか、何を表現したいのか、どうありたいのかということを今までで一番深く考えました。何か行動を起こすときはいつも、自分の正直な声を聴こうとしているような感覚でした。日本でタスクに追われているときにはつい忘れてしまっていたこの感覚に対して新鮮さを感じました。そしてその都度、周りにいる自分にはない魅力をもった友達や先生方から新たな気づきをもらっては、自分なりに自身に落とし込もうとしていたように思います。今の自分に繋がるかけがえのない期間になりました。この体験記を読んでくださっている皆さんも、デンマークならではのゆっくりとした時間の流れや綺麗な自然に身を任せて、小さな喜びや楽しみを噛みしめながら、少しでも自分のことがもっと好きになるような留学生活を送れることを願っています。時には一休みしながらマイペースで留学楽しんでください!
<3時にベッドを抜け出してオーロラ観測>